財産分与
公正証書文例/金銭の財産分与
第●条 甲は乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として金●●●万円を支払うこととし、これを平成●年●月末日限り、乙の指定する金融機関の口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
公正証書文例/マンションの財産分与
第●条 甲は乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、甲所有の下記不動産を譲渡し、同不動産について前記財産分与を登記原因とする所有権移転登記手続きをする。登記手続き費用は甲の負担とする。
〔不動産の表示〕
(一棟の建物の表示)
所在
建物の名称
(専有部分の建物の表示)
家屋番号
建物の名称
種類
構造
床面積
(敷地権の表示)
土地の符号
所在及び地番
地目
地積
敷地権の種類
敷地権の割合
公正証書文例/自動車の財産分与
第●条 甲は乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、甲所有の下記自動車を譲渡することとし、直ちに同自動車につき、前記財産分与を原因とする所有権移転登録手続をする。登録手続き費用は乙の負担とする。
〔自動車の表示〕
自動車登録番号
種別
車名
型式
車台番号
原動機の型式
財産分与は、夫婦の共有財産の清算が主な目的です。不動産や自動車を財産分与する場合、文例のように、対象となる財産を特定する必要があります。
財産分与の基礎知識
財産分与の基本的な目的は、結婚生活で夫婦が協力して築き上げた財産を、公平に分配することにあります(清算的財産分与)。
財産分与は離婚後も可能ですが、離婚後2年で時効(慰謝料的財産分与は3年)にかかりますので、注意が必要です。
その他、財産分与には下記の目的もあります。
●扶養的財産分与・・・ 離婚後に生活が困難になる側への、生活費支援を目的とする財産分与
●慰謝料的財産分与・・・ 慰謝料の性質を含む財産分与
●婚姻費用の清算・・・離婚時までに未払いになっていた婚姻費用(別居中の生活費など)を清算する財産分与
財産分与の分与割合は、財産形成に対する夫・妻それぞれの寄与度(貢献度)によって決まります。
寄与度は収入だけでなく、家事労働も評価されます。判例は、夫婦の分与割合を原則2分の1ずつと認める傾向にあります。
財産分与の対象
財産分与の対象には、現金、預貯金、土地、住宅、マンション、家屋、自動車、家具、電化製品、ペット、貴金属、美術品類、有価証券、保険、営業用財産などのプラス財産のほか、借金、住宅ローンなどの負債(マイナス財産)も含まれます。
これらの財産は、共有財産・実質的共有財産・特有財産に分類されます。
共有財産・実質的共有財産は財産分与の対象になりますが、特有財産は対象になりません。
共有財産
結婚後に夫婦が協力して得た共有名義の財産(名義のないものも含む)。
実質的共有財産
結婚後に夫婦が協力して築いた財産のうち、一方の名義のもの。
特有財産
共有財産・実質的共有財産以外の、夫婦の個別財産。
財産の種別 |
具体例 |
---|---|
共有財産 | 共有名義の住宅、マンション、住宅ローン、自動車ローン、結婚後に購入した家具、電化製品。家庭内にある現金 |
実質的共有財産 | 単独名義の預貯金、有価証券、不動産、車、生命保険、子供の学資保険 |
特有財産 | 独身時代に貯めた預貯金、嫁入り道具、結婚後に自分の親族から相続した財産 |
財産の分け方
現金や預貯金はそのまま分ければOKです。
それ以外のものは、価値を現金に換算して分けるか、ソファとベッドは夫、液晶テレビと冷蔵庫は妻のように個別に分けていく方法があります。
【種類別・財産分与の方法】
●有価証券・・・ 売却して現金を分配、または現物分配
●自動車・バイク・・・ 売却して現金を分配、または名義変更
●生命保険・・・解約して解約返戻金を分配または契約者変更
●不動産・・・売却してローンを完済し、残金を分配する。単独名義に変更して他方の取り分を現金で支払う。妻がそのまま住み続け、住宅ローンは夫が支払う。
●退職金・・・・離婚後数年以内に確実に支払われる予定なら、財産分与の対象に含めて分配
財産分与Q&A
離婚成立後に財産分与の話し合いをすることは可能です。しかし、財産分与の請求権は離婚後2年で時効にかかりますし、相手方が分与すべき財産を処分してしまう恐れもあります。
財産分与の話し合いは、できるかぎり離婚成立前に済ませておくべきでしょう。
名義変更は可能です。ローンの契約書では禁止されているケースが多いのですが、実務上は黙認されているようです(金融機関はローンの支払いさえ確保できれば良いため)。
ただし、名義変更をしても、ローンの債務者は夫のままです。夫がローンの支払いを止めてしまうと、抵当権が実行されてマンションの所有権を失うリスクがありますので、注意が必要です。
専業主婦であっても、40〜50%の割合で分与を受けることが出来ます。
現金での財産分与は非課税となっています(ただし、不相当に多額な場合を除く)。慰謝料や養育費の支払いにも原則として税金はかかりません。
いいえ。離婚しても受取人は変更されません。保険会社に連絡をとり、変更の手続きをしてもらいましょう。
サイト運営者
花田好久(はなだよしひさ)。行政書士。1975年2月生まれ。既婚。福岡県出身。東京都八王子市在住。
離婚・不倫問題専門の行政書士として、開業以来100件以上の離婚公正証書作成に関わる。