養育費の差押え(強制執行)がさらに便利に!
離婚の際、公正証書(強制執行認諾文言入り)を作成しておけば、養育費の支払いが滞ったとき、裁判をせずに強制執行(給与や預金の差押え)をすることができます。
これが離婚公正証書の最大のメリットと言っても過言ではありません。
ただし、強制執行は、裁判所に全てお任せできるわけではありません。
裁判所が勝手に元夫の財産を調べて、差押えをし、お金を渡してくれるわけではないのです。
強制執行を申し立てる側が、元夫の勤務先や、預金口座を調べておく必要があるのです。
そのため、離婚後、元夫が以前の勤務先を退職していた場合や、どの銀行のどの支店に口座を持っているか分からない場合などは、強制執行したくてもできないケースがありました。
夫の財産を調べるには、裁判所に申し立て、夫本人に財産を開示してもらう(財産のありかを喋らせる)手続きあります。
これを財産開示手続きと言います。
ただし、これまでは、公正証書を作っても財産開示手続きは利用できなかったのです(裁判の判決か、調停調書がある場合のみ利用可)
そのため、離婚公正証書を作っていても、夫が転職していたり、銀行口座が分からないと、事実上お手上げ状態だったのです。
しかし、今回(2020年4月)の民事執行法改正により、こうした不便さが解消され、養育費の差押え(強制執行)がより便利になりました。
改正のポイントは下記の3つです。
@「財産開示手続き」が公正証書でも利用可に
A「財産開示手続き」に不出頭、虚偽陳述の場合の罰則が重くなる(刑事罰、懲役6月以下、50万円以下の罰金)
B第三者(裁判所)からの財産情報取得手続きが新設
@「財産開示手続き」が公正証書でも利用可に
これまでは「裁判の判決、調停調書」でしか利用できなかった「財産開示手続き」が、「公正証書(強制執行認諾文言入り)」で利用できるようになります。
A「財産開示手続き」に不出頭、虚偽陳述の場合の罰則が重くなる(刑事罰、懲役6月以下、50万円以下の罰金)
「財産開示手続き」を申し立てたにも関わらず、元・夫が裁判所に出てこなかったり、財産のありかについてウソをついた場合の罰則が、「懲役6月以下、50万円以下の罰金」と重くなりました。
これにより、財産開示手続きの実効性が上がります。
B第三者(裁判所)からの財産情報取得手続きが新設
「第三者(裁判所)からの財産情報取得手続き」が新たに設けられます。
これは、裁判所から金融機関、登記所、年金事務所、市町村などに元・夫の財産情報や勤務先を照会してもらえる手続きです。
これまでは自分で調べるしかなかったものが、裁判所の方で調べてもらえるようになるわけです。
これらの法改正により、公正証書での差押え(強制執行)がより便利になり、さらに養育費を確保しやすくなりました。
もちろん、夫の居場所が分からなくなったり、仕事を辞めて収入も貯金も無くなってしまった場合は、いくら公正証書を作っていてもどうにもなりません。
その点で限界はありますが、今回の改正で養育費の差押えがしやすくなることは、離婚後のシングルマザー(シングルファザー)支援のため一歩前進であることは確かです。
サイト運営者
花田好久(はなだよしひさ)。行政書士。1975年2月生まれ。既婚。福岡県出身。東京都八王子市在住。
離婚・不倫問題専門の行政書士として、開業以来100件以上の離婚公正証書作成に関わる。