将来の離婚に備えて離婚公正証書を作れる?
すでに夫婦間で離婚に合意しているが、仕事や子供の学校の関係で、離婚成立(離婚届の提出)を将来(数か月〜数年)に先延ばしすることがあります。
養育費や財産分与などの取り決めも済んでいる場合、将来の離婚に備えて、今の段階で離婚公正証書を作れるのでしょうか?
将来の離婚の約束というのは、離婚の予約にあたります。離婚の予約が有効であれば、離婚公正証書も作成できそうです。
離婚は結婚や養子縁組などと同じ「身分行為」ですが、身分行為に条件・期限を付けると、身分関係が不安定になってしまいます。
よって、身分行為(身分行為の予約も含む)に条件・期限を付けても無効とされています。
したがって、離婚の予約は法的に無効となります。
公正証書には法的に無効な内容を記載することは出来ませんので、離婚の予約や、それに伴う養育費や財産分与の取り決めも記載することはできません。
残念ながら、将来の離婚に備えて離婚公正証書を作成することはできないということになります。
私署認証という次善の策
せっかく養育費や財産分与の取り決めをしたのだから、後になって「気が変わった」と言われないよう、取り決めの内容を証拠として残しておきたいという方もいるでしょう。
すでにお話したように、将来の離婚のために離婚公正証書を作ることはできません。
次善の策としては、公証役場で私署認証をしてもらう方法があります。
私署認証とは、私署証書(私人が作成した署名入りの文書)の署名・署名押印・記名押印が、真正になされたことを公証人が証明するものです。
簡単に言えば、文書の署名部分が真正であることを公証人から証明してもらえる制度です(※文書の内容の真正は証明してもらえません)
署名部分が真正であれば、文書の内容も真正だろうと推定されます。
例えば、AさんとBさんの名義で作成した文書があるとします。
その文書の署名・押印が間違いなくAさんとBさんのものだとすれば、文書に書かれている内容も正しいだろうという推定が働きますね。
養育費や財産分与の取り決めをした文書について私署認証を受けることで、文書が間違いなく夫婦間で作成されたことを証明することができ、後日離婚公正証書を作る際の証拠となります。
サイト運営者
花田好久(はなだよしひさ)。行政書士。1975年2月生まれ。既婚。福岡県出身。東京都八王子市在住。
離婚・不倫問題専門の行政書士として、開業以来100件以上の離婚公正証書作成に関わる。